金網フェンスは、電気柵に比べ初期投資額は張りますが、一般に耐用年数が長く、メンテナンスがほとんど必要ないという利点があります。単体で効果的に機能するのは、基本的には「登らない動物」、具体的にはシカやイノシシが中心になります。
防除対象となる動物によって防除柵のデザインが変わってくるのは当然ですが、必要最小限以上の防除機能を前提としてコストや施工性などのニーズへの対応も考えると、網の種類も増え、また、適宜網や電気柵を使い合わせた多種多様なフェンスができあがります。
設計・施行を確実に行えば、それぞれ効果的な防除フェンスとなりますが、物理柵であっても(電気柵ほどではないにしろ)、張ったら張りっぱなしではなく、アフターメンテナンスを行いながら、不都合や改善点を常に見出す努力は必要になります。場合によってはバージョンアップを模索していかなければなりません。
多種多様な資材をどのような観点で使い分けるべきか、以下、物理柵に使用される主要資材である網と杭について解説していきます。
「亀甲金網」というと鳥小屋等で使用される貧弱なもが一般的ですが、キタハラが獣害用に用意したのは、線型2.0~2.6mm、網目も縦60~80mmなどの大型亀甲金網です。イノシシはフェンスに噛みつき、執拗に引っ張るという行動が観察されており、本格的な対策をするためには、網目のズレという問題に対応しなければなりません。この点、亀甲金網は構造上、網目のズレという問題は発生しにくいうえ、60mmの場合には、イノシシが鼻を中に入れることも困難ですので、攻撃を加えることすら容易ではありません。
格子金網は、鹿柵として世界中で使用されているソリッドロック・Ⅹ(エックス)フェンスと、コストを優先したマルチフェンス(ヒンジロック)があり、網目の大きさが一定である必然性がありませんので、上部の網目を大きくとってコストを下げることが可能です。ソリッドロックやXフェンスはシカの攻撃には十分な強度を有し、北海道のエゾシカ対策では3000km以上もの実績があります。
強度では一歩譲るものの、マルチフェンスでも動物の侵入要求度によってはイノシシを完全に防除することも可能ですし、シカとイノシシ両方が対象の場合には、イノシシが攻撃を加える低い位置には強度の強い亀甲金網を使用し、上部にはコストの安いマルチフェンスを使用することでコストパフォーマンスの高い柵を設計することができます。
エックスフェンス
ソリッドロックフェンス
マルチフェンス
コスト、施工の迅速、メインテナンスフリー等が評価され、今でも樹脂ネットでの鹿防除も根強い人気。また猿防除で電気さくに被せての使用が効果を上げています
杭(ポスト)は求められる条件から必要な強度、必要な長さを決定しますが、使用可能な杭の中で何を選択するかは、やはり杭の特徴と相談しながら決定します。また、長い一本ものを使用するか、多少割高でもセパレートタイプにするかは施工性を大きく左右します。
木柱使用のメリットは、コストの割に太い杭が得られるので、金網を強く緊張して設置でき、結果として杭間隔を広くとることができ杭数を大幅に削減できることです。反面よほどの短距離でないと、事実上重機を使用した施工が必須となります。また、クレオソートに代わる水溶性防腐剤の防腐能力を疑問視する声があることなどです。後者については、環境配慮型クレオソートに期待がかかります。鉄柱は人力での施工も可能で、一定以上のめっき量であれば耐久性も問題ありません。
鉄柱のデメリットは杭径が細いため杭間隔を狭める必要があり、結果として杭数が増えること、木柱にくらべて現場での加工が困難といったところです。鉄柱の杭の形状は、安定計算(根入れ長さ)・部材強度等の観点から見ますと、丸鋼管が優れています。L字鋼、C型鋼などは丸鋼管に比べて劣りますので、同じ金網を張るにも、より太く、厚いものが必要になってきます。
右図のように2種類のポストを鞘管方式で接続して使用すれば、施工性・強度とも向上します。パスチャー十フィールドの組合せは、コストと強度のバランスに優れます。)
同等厚のいわゆるC型鋼に比べて断面強度に優れ、土中の礫の状態によっては丸鋼管よりも施工性も優れます。
例えば建設業者さんが施工するのであれば、多少の施工の困難性があっても、より頑丈な柵が求められるでしょう。しかし、農家さんが施工する場合にはなるべく施工性の良いものが好ましいのは当然です。そのような、若干コストアップですが、打込み杭と、地上部の杭をセパレートにすることをお薦めしています。杭は短い方が曲がりにくく、打込みも一人で容易にできます。
特に地盤の固いところでは、L字鋼や肉厚の丸鋼管を基礎杭に使用することもあります。基礎杭が細くなる分、杭の安定を多少犠牲にしますが、難所での施工性は大幅にアップします。
お仕事のご依頼やご相談、その他お問い合わせなどお気軽にご連絡下さい。
なお、お電話でのお問い合わせは平日10時~17時までの受付になります。ご了承ください。
TEL:0748-71-4337 FAX:0748-72-6247
メールフォームはこちら
Copyright (C) 有限会社エムテクノ All Rights Reserved.